チュベローズ(Polianthes tuberosa)は、フレグランスの世界で最も扱いが難しい花の一つだ。熱に弱く、蒸気蒸留では香りが壊れる。だからアブソリュートか、かつてはアンフルラージュで採取された。グラースでは今もわずかな農家がチュベローズを栽培している。
アンフルラージュとは何か ¶
アンフルラージュは、花を冷たい脂肪の上に並べ、脂肪に香りを吸収させる採取法だ。熱を使わないため、熱に弱い花の香りを損なわない。しかし非常に労働集約的で、現在ではほとんど行われていない。グラースでは一部の工房が観光目的で続けているが、商業的な規模では溶剤抽出(ヘキサン抽出)が主流になっている。
現在のアブソリュート生産 ¶
現在のチュベローズ・アブソリュートは、ほぼすべて溶剤抽出で作られる。花をヘキサンに浸し、コンクリートと呼ばれる半固体を得る。これをアルコールで洗い、アルコールを蒸発させるとアブソリュートが残る。Robertet社のアブソリュートは、グラース近郊の契約農家から仕入れた花を使用している。
チュベローズの香りの構造 ¶
チュベローズの香りは複雑だ。甘い花の印象の下に、緑がかった草の感触、わずかな動物的なニュアンスがある。これがチュベローズを単なる「甘い花」ではなく、深みのある素材にしている。Célesteが「Glade de Novembre」でチュベローズを使ったのは、この複雑さがウードやラブダナムと共鳴するからだ。
産地の現状と価格 ¶
グラースのチュベローズ農家は減少している。栽培に手間がかかり、収益性が低いためだ。アブソリュートの価格は過去十年で大幅に上昇した。Obsidian Cedar Gladeは、Robertet社との長期契約で安定した供給を確保しているが、それでも毎年の価格交渉は難しい。
チュベローズ・アブソリュートは、フレグランスの中で最も「生きている」素材の一つだと思う。毎年少しずつ変わる。それを受け入れることが、この素材との付き合い方だ。